ウイング経営労務コラム

賃金・退職金

「地域別最低賃金」の目安   [2012.07.25]

こんにちは。

『東京ウイング社労士事務所』の山田です。

平成24年度の「地域別最低賃金」の目安は、中央最低賃金審議会において全国平均「7円」の引き上げが決まりました。

「地域別最低賃金」の目安は、平成19年度から4年連続で2ケタの引き上げとなっていましたが、今年度は東日本大震災の影響により、5年ぶりの1ケタの引き上げとなりました。

最低賃金は最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定めるもので、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払う義務があります。

最低賃金には、「地域別最低賃金」「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。

「地域別最低賃金」は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用されるのに対し、「特定(産業別)最低賃金」は、特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその使用者に対して適用されるものです。

「地域別最低賃金」は、地域における労働者の「生計費」及び「賃金」並びに通常の事業の「賃金支払能力」を考慮して定められなければならない、ことになっています。

地域別の最低賃金については、今後、各都道府県の審議会において、それぞれ正式決定されることになります。

現在、11都道府県において、生活保護の給付水準の方が最低賃金より高い現象が生じていますが、今年度これをすべて解消することは困難な状況といえます。

なお、最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金であり、割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などは除かれます。

最低賃金額以上かどうかは、賃金額を時間当たりの金額に換算し、最低賃金(時間額)と比較します。

(例)基本給:125,000円、職務手当25,000円、通勤手当8,000円、

1月の所定労働時間173時間、最低賃金額800円(時間額)

→ 125,000+25,000=150.000  150,000÷173=867 > 800 ・・・ 最低賃金額以上

なお、「地域別最低賃金額」の違反には、罰則(50万円以下の罰金)が適用されますが、「特定(産業別)最低賃金」罰則の適用はありません。

余談ですが、私は船員の最低賃金の審議を行っていた船員中央労働委員会の最後となる最低賃金の改定に携わった経験があるため、目安決定の報道には特別な想いがあります。

最後までご愛読いただきまして、誠にありがとうございました。

「残業の効果的な管理」   [2012.07.21]

こんにちは。

『東京ウイング社労士事務所』の山田です。

残業は効果的に管理することによって、無駄な残業を減らすことができます。

1.残業は「会社の命令」によって行われるものですから、残業の命令を出す上司は常に、日々の業務の状況を把握しておくことが大切です。

2.上司が命令を出すことができない場合には、あらかじめ上司に残業の申請を出させ、上司の承認を求める方式を採用します。

3.やむを得ない事情で、上司の承認を得ることができなかった場合には、翌日速やかに上司の事後承認を得ることとします。

4.上司は命令または承認を得ないで、残業をしている部下には、退社させます。

以上のことを徹底することによって、無駄な残業を一定程度減らすことができるはずです。

また、命令または承認を得ない残業は、時間外労働、休日労働とは認めないことを就業規則に規定しておくことも必要です。

上司は部下の業務の状況を把握するためには、部下とのコミュニーケーション(報告・連絡・相談)が取れていることが必要となります。

佐々木常夫(東レ経営研究所特別顧問)さんは、著書『部下を定時に帰す仕事術の中で、『会社はプロの社員を求めているが、プロとは限られた時間の中で、いかに効率的良く成果を出すかである。』であり、『長時間残業は「プロ意識」「羞恥心」の欠如』と述べられています。

私も公務の中で、残業の申請・承認制に関与し、一定程度の無駄な残業を減らすことができた経験があります

無駄な残業を減らすことは、仕事の生産性を向上させるとともに仕事と家庭を両立させることにつながると考えます。

最後までご愛読いただきまして、誠にありがとうございました。

 

 

「一定期日払いの原則」   [2012.07.17]

こんにちは。

『東京ウィング社労士事務所』の山田です。

今回は「賃金支払い5原則」のうちの「一定期日払いの原則」について考察します。

賃金は就業規則等により「一定期日」に支払う義務があります

ただし、例外として、次のものがあります。

1.臨時に支払われる賃金等

臨時に支払われる賃金賞与その他これに準ずるもの精勤手当:1ヶ月を超える期間の出勤成績によって支給、勤続手当:1ヶ月を超える一定期間の継続勤務に対して支給、奨励加給または能率手当:1ヶ月を超える期間にわたる事由によって算定)

2. 非常時払

労働者が非常(出産、疾病、災害、結婚、死亡、1週間以上にわたる帰郷)の場合の費用に充てるため、請求した場合 ・・・ 支払期日前でも、既往の労働に対する賃金の支払い義務があります。

3. 退職時の賃金について、請求があった場合

退職者から「請求があった日から7日以内」に支払い義務があります。

なお、退職金は、通常の賃金の場合と異なり、あらかじめ就業規則等で定められた支払時期に支払えば足りる、とされています。

(参考)

1.賃金支払い5原則

①通貨払いの原則、②直接払いの原則、③全額払いの原則、④毎月1回以上払いの原則、⑤一定期日払いの原則

2.労働基準法 

(金品の返還)

第二十三条  使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。

(賃金の支払)

第二十四条  (略)

2  賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

(非常時払)

第二十五条  使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。

最後までご愛読いただきまして、誠にありがとうございました。

 

「固定残業代」とは   [2012.06.03]

こんにちは。

『東京ウイング社労士事務所』の山田です。

 今回は会社の経営の中で、見落としやすい「固定残業代」について、綴ります。

会社は毎月の残業代の計算に多くの労力を要することから、残業代を、固定額として支給しているところがあります。

労働基準法では、労働者に法定労働時間を超えた時間外労働や休日労働、深夜労働をさせた場合には、割増賃金を支払わなければならないことになっています。

(例)週40時間労働制で、基本給20万円、職務手当(固定残業代)5万円、通勤手当1万円の場合

 残業単価は基本給20万円 ÷ 173時間(月間所定労働時間)× 1.25 ≒ 1,445円

 となりますので、固定残業代を職務手当として支払っている場合には、

 5万円 ÷ 1,445円 ≒ 34.6時間

つまり、1ヶ月の残業の実績時間が34.6時間以下の場合には、問題は生じませんが、仮に50時間残業した場合には、その差額を残業代として支払わなければ不払い残業代となりますので、注意が必要となります。

それではその根拠は、何なのでしょうか。

ずばりその根拠は、労働基準法に毎月、一定期日に賃金の全額を支払うことが定められているからです。

また、固定残業代を適法にするためには、就業規則、賃金規程、労働契約などに明確に規定しておくことが必要となります。

最後までご愛読していただき、ありがとうございました。

 

 

「未払い残業代」とは   [2012.06.01]

こんにちは。

『東京ウイング社労士事務所』の山田です。

今回は経営者の頭を悩ませ、会社の収益にも影響を及ぼす「未払い残業代」について、綴ります。

≪未払残業代の請求≫

退職した従業員から突然、過去2年間の未払残業代を支払うよう求める内容証明郵便が届きました。

指定期日までに支払わない場合、公的機関に訴える旨が記載されています。

この会社は出勤時間、退勤時間を記入しないで、出勤簿に押印することで管理していました。

残業代に関しては、雇用契約書はなく、採用時に口頭で「残業代は給与に含まれる。」というものでした。

≪勤怠管理≫

この会社では「出」、「欠」の印を押印する簡易的な勤怠管理をしており、残業時間をそこから読み取ることはできませんが、会社としても「相手の主張には根拠がない。」と決めつけることはできません。

≪残業代≫

この会社は、残業代は給与に含まれると口頭で説明したのみであり、雇用契約書や給与明細書上に残業を支払った記載をしていないため、残業代が給与に含まれていることを主張するには不十分と言えます。

このため、「パソコンのログアウト時刻」や「帰宅時間に関する本人や家族のメモ書きなど」が提出されれば証拠としてみなされる場合があり得ます。

≪時効≫

賃金債権の時効2年と定められています。

≪想定計算例≫

基本給20万円、職務給2万円、通勤手当1万円、家族手当1万円

所定労働時間8時間(9時~18時)、月平均20日出勤、残業時間毎日3時間

⇒ 総残業時間(3時間×月20日×24ヶ月)×残業の単価(22万円÷20日×8時間×1.25)=247万5千円

上述のように曖昧な時間管理をしていますと、ある日突然、莫大な残業代を請求されることになりますので、まずは残業に関する時間管理をしっかりすることが必要です。

最後までご愛読していただき、ありがとうございました。

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