ウイング経営労務コラム

労働・社会保険

「任意継続被保険者」   [2012.10.13]

こんにちは。

『東京ウイング社労士事務所』の山田です。

会社を退職するとき、国民健康保険に加入するしかないと思っている方はいませんか。

 

健康保険の「任意継続被保険者」となる方法があります。

「任意継続被保険者」の特徴としては、次のとおりです。

1.「任意継続被保険者」の資格取得の要件としては、

(1)一般の被保険者の資格喪失日の前日までに「継続して2ヶ月以上の被保険者期間」があること。

(2)一般の被保険者の資格喪失から「20日以内」に申請すること。

2.「任意継続被保険者」の資格取得の時期は、一般の被保険者の資格喪失した日となります。

3.「任意継続被保険者」は、在職中の被保険者が受けられる保険給付と同様の給付を原則として受けることができますが、傷病手当金、出産手当金の保険給付を受けることはできません。

4.保険料は、労使折半ではなく、全額自己負担となります。

5.「任意継続被保険者」の標準報酬月額は、一般の被保険者の資格を喪失したときの標準報酬月額と前年9月末における全被保険者の平均標準報酬月額(280,000円)の少ない額となっています。つまり、高給の退職者の場合には、保険料が少なくて済むということになります。

6.「任意継続被保険者」の期限は、「任意継続被保険者となった日から起算して2年間」となっています。ただし、保険料を納付期日(その月の10日)までに納付しなかったときは、納付期日の翌日に、「任意継続被保険者」の資格喪失となります。

なお、国民健康保険の保険料は、「前年度の年収」によって決定されるため、一般的には保険料が高いといわれていますが、個別で異なるケースがありえますので、予め市区町村において保険料を試算してもらうことをお勧めいたします。

また、国民健康保険への加入または「任意継続被保険者」のほか、配偶者等の扶養に入ることも考えられます。

最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

 

 

「65歳」   [2012.10.06]

こんにちは。

『東京ウイング社労士事務所』の山田です。

団塊の世代(昭和22年~24年生まれ)が、今年から順次、満65歳を迎えます。

労働者にとって、65歳を境にして制度が変わるものがあります。

1.「基本手当」から「高年齢求職者給付金」へ

65歳に達する日(誕生日の前日)前までの退職であれば、失業給付は「基本手当」ですが、65歳に達する日(誕生日の前日)以後の退職の場合には「高年齢求職者給付金」となります。

「高年齢求職者給付金」の支給要件は、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6ヶ月以上あり、働く意思と能力はあるものの、失業の状態であることです。

「高年齢求職者給付金」の支給額は、被保険者であった期間に応じ、

基本手当の日額相当額 × 50日(算定基礎期間が1年以上

基本手当の日額相当額 × 30日(算定基礎期間が1年未満

2.「介護保険第2号被保険者」から「「介護保険第1号被保険者」へ

事業所での介護保険料の控除は、第2号被保険者(40歳以上65歳未満)に限るため、65歳に達した月から第1号被保険者として、特別徴収(年金から控除)または普通徴収(年間の年金が18万円未満など)されます。

3.「老齢厚生年金」の支給開始

65歳から老齢厚生年金が支給されます。

ただし、在職し、厚生年金保険料を支払っている場合には「在職老齢年金」制度により、年金の支給が一部(全部)停止されることがあります(平成24年9月20日付けのコラム「在職老齢年金」をご参照ください)。

4.「高年齢雇用継続給付金」の終了

「高年齢雇用継続給付金」とは、60歳から65歳までの間において、60歳到達時と比べ、賃金が低下したした場合、支給を受けることができる給付金であり、60歳に達した月から65歳に達した月まで支給されます。

今後3年間において、団塊の世代が満65歳に達することになり、また、平成25年4月1日からは65歳までの継続雇用が義務化されることになっていますが、今後は能力と意欲の労働者に限り、70歳に向けて政府、企業は高齢者の経験を活かせる職場づくりの創出を図ってもらいたいものです。

最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。                             

「被扶養者」   [2012.09.13]

こんにちは。

『東京ウイング社労士事務所』の山田です。

「家族手当」の支給の有無については、会社の賃金規程等で決定していますが、大半の会社は「家族手当」を支給している実態にあります。

今般、「家族手当」を一律支給している会社があり、一律支給であるため、時間外手当等の割増賃金の基礎賃金の対象となることから、所得税法上の配偶者控除を受けられる103万円以下の扶養家族の人数に応じた支給方法をご提案しました。

一方、「社会保険」の被扶養者の要件は、健康保険法で定められています。

1.主として被保険者に生計を維持されていること。

2.年収130万円(60歳以上の場合または障害年金受給者は年収180万円)未満で、かつ被保険者の年収の半分未満であること。

3.被保険者の直系尊属、配偶者、子、孫、弟、妹、及び被保険者と同居している、被保険者の兄、姉、叔父、叔母、甥、姪など75歳未満に限る)。

同じ被扶養者でも、「家族手当」と「社会保険」では相違があることがあり得ることを知っておきましょう。

最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

「傷病手当金」   [2012.09.10]

こんにちは。

『東京ウイング社労士事務所』の山田です。

国民健康保険と健康保険との違いの一つとして、「傷病手当金」があります。

国民健康保険では、「傷病手当金」、「出産手当金」は任意給付とされ、制度的には地方自治体において条例等の定めにより、支給できることになっていますが、支給できる実態とはなっていません。

1.「傷病手当金」の支給としては、次の要件をすべて満たしていることが条件です。

(1)病気やけがで、療養の給付を受け、療養していること。

(2)労務不能であること。

(3)継続した3日間の待期が完成していること。

   つまり、会社を休み始めて、4日目から支給となります。

(4)給与の支給がないこと。

 ただし、給与の支給が傷病手当金より低額であれば、その差額が支給されます。

  なお、待期期間中は給与の支払いがあっても、労務不能であれば差支えない。

2.「傷病手当金」の給付内容

(1)支給される金額は、休業1日当たり標準報酬日額の2/3です。

  ※標準報酬日額は、標準報酬月額の1/30相当額

  つまり、標準報酬月額が30万円であれば1ヶ月間休むと傷病手当金として20万

  円が支給されます。

(2)支給期間は支給開始日から1年6ヶ月間です。

  なお、支給期間中に給与が支給され、傷病手当金の支給が中断しても、その期間が延長されることはありません。

明日を読めない人生において、いつ病気やけがに出遭っても、しっかり対応できる「傷病手当金」の存在を知っておくことは意義のあることだと思います。

最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

「基本手当日額」の引下げ   [2012.08.02]

こんにちは。

『東京ウイング社労士事務所』の山田です。

8月1日から雇用保険の「基本手当日額」引下げています。

今回の変更は、平成23年度の平均給与額(「毎月勤労統計調査」による毎月決まって支給する給与の平均額)が前年度と比べて、約0.2%低下したことに伴うものです。

雇用保険の「基本手当」は、労働者が離職した場合に、失業中の生活を心配することなく再就職活動できるよう支給されるものです。

「基本手当日額」は、離職前の賃金を基に算出した1日当たりの支給額をいい、給付日数は離職理由や年齢などに応じて決められています。

具体的な変更としては、次のとおりです。

1.「基本手当日額」の最低額の引下げ

1,864円 → 1,856円 (▲8円)

2.「基本手当日額」の最高額の引下げ

基本手当日額の最高額は、年齢ごとに定められています。

①   60歳以上65歳未満  6,777円  →  6,759円 (▲18円)

②   45歳以上60歳未満  7,890円  →  7,870円 (▲20円)

③   30歳以上45歳未満  7,170円  →  7,155円 (▲15円)

④   30歳未満         6,455円  →  6,440円(▲15円)

3.失業期間中に自己の労働による収入がある場合の基本手当の減額の算定に係る控除額の引下げ

1,299円 → 1,296円 (▲3円)

4.高年齢雇用継続給付の算定に係る支給限度額の引下げ

344,209円 → 343,396円 (▲813円)

デフレ経済下にあり、「基本手当日額」の引き下げはますます消費の抑制につながります。

最後までご愛読いただきまして、誠にありがとうございました。

「社会保険」加入の推進   [2012.06.15]

こんにちは。

東京ウィング社労士事務所の山田です。

今、国土交通省は法令を遵守して適正に保険料を負担する事業者ほど競争上不利になる状況をなくすことなどを目的として、社会保険未加入対策に取り組んでいます。

5月、建設産業においては平成29年度を目途に企業単位で加入義務のある建設業許可業者の加入率を100%とする目標を掲げ、「社会保険未加入対策推進協議会」を立ち上げています。

また、貨物自動車運送業についても、5月、社会保険等未加入対策の会議を開催しています。

それでは、社会保険の加入条件は、どのようになっているか、確認してみましょう。

すべての法人」、「労働者5人以上の個人事業」は強制適用事業所となり、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しなければなりません

社会保険は労働保険と異なり、経営者も加入することになります。

また、パートやアルバイトの場合、次の①、②いずれも満たしている場合加入義務が生じることになります。

①1日または1週間の労働時間が正社員の3/4以上 

つまり、正社員の週当たりの所定労働時間が40時間の場合

40日 × 3/4 = 30時間以上

②1ヶ月の労働日数が正社員の3/4以上

正社員の1月当たりの所定労働日数が22日の場合

22日 × 3/4 = 16.5日以上

この点で、社会保険加入基準ギリギリのパートやアルバイトについては、時間などの管理を厳格に行うことが必要となります。

参考として、前述の労働時間(1週30時間以上)を基準とする場合、その30時間を1月に換算すると  「130時間以上」となります。

月次の労働時間を見て130時間を超えている場合、社会保険の加入義務があると判断されますので、参考にしてください。

国土交通省出身の社会保険労務士」として、社会保険未加入の会社に対して加入を働きかけていくことは、国の施策に協力でき、社会のお役に立てる仕事だと思っています。

社会保険加入のご相談は、info@sr-yamada.jp または090(9815)7626までご連絡ください。

いつもご愛読いただきまして、ありがとうございました。

「社会保険料算定基礎届」   [2012.05.30]

「ウイング経営労務コラム」に、ご訪問いただきまして、誠にありがとうございます。

今回は7月1日現在の社会保険の被保険者の報酬の届書である「社会保険料算定基礎届」について、綴ります。

1.これは毎月、社会保険料を計算することは、とても煩雑なため、毎年1回、4月・5月・6月の報酬の平均額を「毎月の報酬とみなして、1年間保険料を変えないでおこう。」という意味合いのものです。

2.毎年7月10日までに年金事務所(健保組合)に届出を行い、その年の9月以降の標準報酬月額を決定します。この決定を「定時決定」といい、定時決定を行うために提出する届書を「算定基礎届」といいます。

3.報酬は、原則として、通勤定期券、食事、住宅などの現物支給を含め、会社から労働の代償として受けるものすべてをいい、給与、賃金、手当等の名称には関係ありません。なお、病気見舞金など会社から恩恵的に支給されるもの、傷病手当金など保険給付として受けるもの、出張旅費など実費弁償的なものは報酬とはなりません。

4.4月・5月・6月において、報酬を計算する基礎となった日数が、17日未満の月がある場合には、その月を除外して計算します。

5.定時改定により、保険料はその年の9月分から翌年8月までの1年間変更しませんが、例外として、昇給などの固定的賃金によって報酬の額が著しく変動(2等級以上の差)した場合には、現状に合わせるため、著しい変動があった月以降の3か月間の報酬を基に、4か月目から標準報酬月額を改定することになります。この改定は「随時決定」といい、このための届書を「月額変更届」といいます。

6.「算定基礎届」の提出が必要でない人は、①6月1日以降に入社した人、②6月30日以前に退職した人、③7月~9月に「月額変更届」を提出する人などです。

ご愛読ありがとうございました。

「労働保険の年度更新」   [2012.05.26]

「ウイング経営労務コラム」に、ご訪問いただきまして、誠にありがとうございます。

 

今回は、「労働保険の年度更新」について、綴ります。

労働保険(労災保険と雇用保険)の保険関係が成立している会社は、年度(4月1日から翌年3月31日まで)毎に、毎年6月1日から7月10日までに「労働保険の概算・確定保険料申告書」を提出することになります。

1.保険料の計算方法

 労働保険料は「年度の賃金総額」に「保険料率」を乗じて計算します。

(1)まず、年度の初めに概算保険料を申告します。

(2)次に、翌年度当初に確定保険料を算定し、納付します。

(3)この処理を年度毎に連続して行うことで申告・納付します。

つまり、「前年度の確定精算」と「新年度の概算計算」を同時に行うことを、「年度更新」といいます。

通常は概算額と確定額は一致しないため、その差額を翌年度の概算保険料と差し引き調整(充当・還付または追加納付)します。

 

(例)平成23年4月1日に労働保険に加入の場合

クリーニング業、従業員10名、全員が労災及び雇用保険に加入、年間賃金支払見込額3,000万円、実際の賃金支払額2,700万円

①概算払い 

3,000万円×(労災保険料率3/1,000+雇用保険料率15.5/1,000)=555,000円

②平成24年4月1日以後、確定精算

2,700万円 × 18.5/1,000 = 499,500円

①-②=55,500円を払い過ぎたため、翌年度の概算保険料から55,500円

差し引いて納付する。

 

2.計算ミス防止のポイント

間違えやすいものとして、2つあります。

(1)賃金総額を間違える。

・賞与を賃金に算入していない。

・アルバイトの賃金を労災の賃金総額に算入していない。

・64歳以上の雇用保険料免除者の賃金を誤って算入している。

・年度途中の雇用保険上の異動(資格取得・喪失)が反映されていない。

・解雇手当金を賃金として算入している。

(2)保険料率を間違える。

・登録した産業分類が誤っている。

(建設業を不動産業として登録しているなど)

・法改正による保険料率の変更が反映されていない。

 

(注)平成24年4月1日改正

・労災保険料率

 最小2.5/1,000 (前年度  3/1,000)

 最大 89/1,000 (前年度103/1,000)

・雇用保険料

 一般の事業 13.5/1,000 (前年度 15.5/1,000)

 農林水産等 15.5/1,000 (前年度 17.5/1,000)

 建設の事業 16.5/1,000 (前年度 18.5/1,000)

 

自社で年度更新の処理をされている会社様は、ご参考にしてください。

ご愛読ありがとうございました。

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